Vol. 29
2005.2.15
トップアスリートによる、バドミントン指導会スタート
 2月13日(日)午後6時より、十条台小学校体育館において、昨年12月5日のミニイベントにお越しいただいた、NTT東日本バドミントン部に所属の須賀隆弘さんと竹鼻拓也さんを再度コーチとしてお招きし、「トップアスリートによる、バドミントン指導会」を開催しました。
 開催期間は、2月13日・20日・3月6日の3日間行います。
 今回の指導会は、昨年のデモンストレーションと異なり、技術的・戦略的な指導をコートの中で共にプレイしながら伝えていただく方法で行いました。「卓球コミュニティ」をいつも通り開催している関係上、バドミントンの使用出来るコート数が2面と限られている中で、密度の濃い指導内容を行う為には、いささか苦労されたのではと感じました。それでも機敏に対応していただいたお二人には、さすがと頷ける指導内容でした。

 第1回目は、「小中学生が中心のジュニアと初心者の大人グループ」と「中級以上の経験者グループ」の2つにグループ分けし、各コートに分かれての指導を受けました。コーチも夫々のコートに分かれ、レベルに合わせたテーマを与えて頂きました。

 ジュニアが中心のグループでは、須賀コーチから基本として必要な打法の説明を中心に指導を受けました。以下に、指導を受けた大まかな内容を書き記します。
・ハイクリアショットの打ち方
 バックスウィングで利き腕と同じ側の足を引きながらしっかりと体重を乗せ、頭の真上の出来るだけ高い位置でシャトルを捉え、引いた足を一歩前に送り出しながら、しっかりとラケットを体の前まで振り下ろす。決して、小手先でシャトルを扱ったり、低い位置でシャトルを捉えようとしないで、シャトルの真下に体が入るように素早く移動する。
 後方への長いクリアショットに対しては、上体で追いかけるのではなく、下半身のステップを軽快に使い対応する。全て落下してくるシャトルに対して、素早く真下へ移動する下半身の動きが大切である。

・ドライブショットの打ち方(フォア&バック)
 通常のラケット面を相手側に向けて小さく早く振る動作ではなく、特にネット際の対応と
しては、ネットにシャトルが掛からないようにする為に、車のワイパーの動きの様に手首の力を抜いて、ドアのノブを回すような手の動きの中で、グリップを支点にして左右にラケット面を振る動きだけで、相手コートに入ったシャトルは下向きに落下していくので、効果的なドライブショットになる。加えて、バックショットでのグリップの握り替えも必要無くなるので、早いシャトルへの対応が迅速に行える効果がある。
 特にダブルスゲームでは、対戦相手のいない場所を狙っての、早いリターンの際に使うショットだけに、サイ
ドラインに振り分ける際にも、ドロップしながらの早いシャトルを返すことで、より高い効果が得られる。この場合も、体の正面で捉える基本は忘れてはならない。

・ロブショットの打ち方
 ネット際に落ちてくるシャトルに対して、必ず体の正面で捉える様にフットワークを大事にする。利き腕と同じ側の足をしっかりと前に踏み出し、下半身の力を利用してシャトルを大きく高く弾き返す。小手先で合わせる様な、又は、上体の力だけで打ち返す動きは控え、足を踏み出す事によってしっかりと下半身の土台作りをした上で、下半身の力をラケットに伝える下から上への大きな腕の動きを常にイメージする。

・スマッシュショットの打ち方

 ハイクリアショットと同様に、しっかりとシャトルの下へ体を移動させて、利き腕側の足に体重を乗せ、顔の前辺りでシャトルを捉えるタイミングで、一歩踏み出す力を利用し鋭く振り抜く。この際に、やはり出来るだけ高い位置でシャトルを捉まえることと、下半身の体重移動の力をラケットに伝えていく様に、不必要な力みを無くすことが大切である。シャトルを捉えるラケット面の位置は、シャトルが下向きに相手コートへ鋭く突き刺さる角度が必要で、しっかりと下半身の力が伝わっていく打点ポイントを練習で見つけ出し体で覚えること。

 中級以上の経験者グループでは、竹鼻コーチから戦略性につながる練習方法の指導を受けました。
 練習の基本は、楽しく継続的に行えることが大切で、単に日常的にやっている基本ショットの練習は、体の動きを温めるウォーミングアップ程度に過ぎず、実践的な練習を少しでも取り入れて楽しむ事が大切であるという考えから、以下のような練習方法の指導を受けました。
・移動してのフォアショット・バックショットの練習
 練習する者がネットに向かってコート中央に立ち、補助する者はネットを背にしてシャトルをサイドライン側にトスする。トスされたシャトルに対し、下半身(特に利き腕側の足)を素早く大きく踏み出し、体の正面でラケット面を自由に使える下半身の土台を築き、シャトルの落下に合わせ下から上へラケットを大きく振り上げる。その際に、ラケット面が開いたり閉じてカット打ちになるようなことを避ける。ラケット面がネットと平行になるよう、リストスタンドの状態をしっかりと作り、下半身の力と腰の回転を利用して大きく振り抜くことが大切である。体のバランスとタイミングを大切にして、安定した下半身を築く為のフットワークが大事になる。シャトルの落下スピードに慌てることなく、充分下半身を落下地点に間に合わせてから振り抜く練習を繰り返す。
 振り抜いて打ったシャトルは、エンドラインのギリギリまで高く大きく飛ばせるように練習する。エンドラインまで運べるようになったら、コートエンドの左右のコーナーにコントロール出来るように練習する。
 この練習で注意しなくてはならない点は、フォアサイドもバックサイドも同じ様に下半身の土台を作ることと、両サイドとも肩関節を支点に大きく振り抜くことを身に付ける。決して、中途半端に合わせる練習はしないこと。そして、打った後に素早く元の位置へ戻ることが大切で、フットワークを使わない練習は意味をなさない。
 この練習を普段から少しづつでも取り入れていけば、自然と関節の柔軟性や下半身の筋力アップ(特にハムストリングや大腿四頭筋などの大きな筋力の強化)が養われる。

・移動してのドライブショット(ストレート)の練習
 前記の応用で、大きくロブやクリアを上げるのではなく、相手側からの早いドライブショットやプッシュショットに対応する様に、移動してストレートにエンドコーナーを狙う練習である。この練習は、下半身の移動やフットワークは前記の練習と変わりないが、早目のトスに対応してより素早く体の正面で捌ける様に移動することが必要である。
 この際、注意しなくてはいけない事は、素早く移動し下半身の土台を築く・体の正面でシャトルを捌く・シャトルを上げずにコート面と平行より下向きに打ち抜く・ネットに掛けることのない位置でシャトルを捉える・エンドコーナーを的確に狙って打つ・打球を早く強く相手コートに打ち入れる、の6つの点が挙げられた。
 技術的には、リストスタンドさせたままラケット面をネットに平行状態でシャトルを捉え、打ち抜く瞬間にラケット面を前方に被せていく。決して、ラケットを上から下へ叩きつけるのではなく、ラケット面を閉じることによって、シャトルが上がるのを防ぎ、前方にラケットを押し出すことでシャトルの早さと強さを引き出す。

・走りこんでのドライブショット(レシーブ・ストレート)の練習
 前項から尚も発展させ、自コートのサイドから反対サイドへ走り込んでレシーブをして、相手コートへストレートに的確に返球する練習をした。コートの左右両方からスタートし、フォアのショット・バックのショットを動きの中から、ミス無くネットを越して相手コートへ運ぶことが目的である。どんな体勢からでも、相手コートへ返球が出来なければゲームにならない。出来るだけ素早く動いて、前項までやった下半身の体勢作りが出来るように繰り返すことが大切である。出来れば安定したフットワークから、出来るだけ低くネットギリギリに打ち返し、早く強いドライブの返球が出来るようになればベストである。
 その際、クロスサイドへの返球は身体に無理を強いる事になり、小手先で強引なショットをしてしまうことに成りかねないので、出来るだけコンパクトに相対する相手コートのサイドライン真際へのストレートコースを突くイメージを持つことが望ましい。フットワークが間に合わない場合は、焦らずシャトルの落下点に近いポイントで、相手コートに深いロブを返球するような対応が必要である。この場合も、自分の形が無理な体勢になるような難しいショットを打とうとせず、確実に相手コートへ返球するイメージを優先する。無理な体勢からのドロップやカット・スマッシュは、ネットに掛けてしまう可能性が高いので、次の受けの体勢が築ける的確な返球が求められる。焦らず、力まず、余裕が持てるショットを心掛けることがポイントである。

 ダブルスゲームの場合、相手のサイドコーナーへ目掛けてのショットが確実に打てれば、守備の布陣が取り易くなる。ストレートにコーナーへの返球をすれば、返球した者はその場で相手からのストレートコースを固め、チームメイトは相手からの対角線に対し正対して受ける布陣を素早く組むことが出来る。この様に、次のショットへの体勢作りも踏まえながら、1ショットを大切にする練習を楽しく行う。
 適時に合わせたフットワークや布陣を身に付ける為には、こうした練習を常に重ねることが必要で、ゲーム練習では得られない実戦的な動きの体得が上達の早道となる。

・ミニゲームによるプッシュショット等の「攻め」・「受け」の練習
 コートの半面を利用して2対2でのダブルス形式でミニゲームを行う。
 ポジションは、両チームともトップ&バックの攻撃型布陣で、ショートサーブからロブ・ドロップ・ドライブ・プッシュなどのショットを駆使してシャトルのスピード感を養うゲーム形式のトレーニングである。コート半面で行うので、サイドバイサイドの守備型布陣にはならず、コンパクトな攻撃スタイルを身に付ける効果と、早い攻撃や加速してくる返球に対し、機敏に対応する俊敏性を身に付ける。
 ゲーム形式で行うので楽しみながら技術を会得出来て、前後で近くにいるチームメイトとの距離感や不要な動きの抑制にとても効果がある。

・ネットを緩めて鋭角的なスマッシュショットの練習
 最後にネットの張りを緩めて、ネット際でのスマッシュの練習を行った。ネット際から補助者(コーチ)が、やや高いトスを上げ、出来るだけ鋭角で相手コートへ突き刺すようなスマッシュを反復して打つ。
 この練習では、スマッシュショットでのラケットの使い方を覚え、面の作り方・打点のポイントなどを自ら体感することが出来る。力まず肩関節を柔軟に動かすことが重要なポイントで、体の動き特に腕の振りが小さくなってしまうことを防ぐ効果がある。

 以上の様な、正に実戦に即した練習方法などを指導して頂き、第1日目の指導会は終了しました。
 両コーチには、非常に充実した時間を与えて頂き、バドミントンを楽しむ・自己の技術スキルを向上させるには、充分目的を達成した指導会になったのではと感想を持ちました。参加して頂いた皆さんも、とても貴重な経験をしたと共に、身に付く指導を受けたのではないかと思いました。
 バドミントン指導会の模様