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10月のつぶやき
「地域型スポーツクラブ」への考察3
地域型スポーツクラブが地域に果たす役割
 体育の日のTVニュースでは、子どもの体力低下を大々的に取り上げていました。外遊びをしなくなった子どもの身体バランスへの危惧並び警鐘といった所でしょうか…。体力指標としての体力テストの数値は、確かに20〜30年前などと比較しますと、ソフトボール投げや屈筋力を必要とする種目で、明らかな低下が見られています。野球少年やバレーボール少女の減少は、こうした数値比較からも読み取れます。しかし、サッカー少年が増えてきた昨今では、脚伸展力の数値は上がっています。ロナウジーニョやジダンの華麗なドリブルやボール・コントロールは、子どもの頃の遊びで身に付いたもので、指導者の教えから修得したものではありません。少年少女の行うスポーツや運動は、特定の種目に限定される事無く、バランス良く実施される事が望まれます。
 大人も子どもも、生活の中で身体を動かす“遊び”はとても大切です。大人の責任としては、子どもが安心して遊べる環境の整備や、運動へのヒントを与えることにより、活動する子どもを暖かく見守る事であると思います。

 「総合型地域スポーツクラブ」の目標として、多種目のプログラムを提供する事が挙げられますが、地域の人材のみでは、多くの参加者ニーズに対して応える事は出来ません。前コラムでも紹介したように、今夏「バドミントン・ビギナーズ・スクール」として、地域指導者と体育協会所属の競技指導者・実業団所属トップ選手といった、毛色の違う指導者を揃えた教室プログラムを実施しました。
 クラブへ指導協力していただいているトップアスリートからは、
「地域の活動として、スポーツを通じ年齢や男女を問わず、様々な方が同じ時間を共有でき、楽しめるということは大変すばらしい事だと思います。」「今回の講習会で印象に残った事は、バドミントン愛好者が年齢・世代、関係なく大勢いらっしゃる事。皆様が積極的に練習に参加し、うまくなるためにはという質問を沢山頂いて、回答後それをすぐ実際に取り組んでいた事。この2点が印象的でした。」という新たな環境への評価を頂いています。
 このスクール事業は、「赤羽中学学校施設開放協力会」の理解の下で、平日夜間の学校施設を有効活用し、地域のスポーツ需要に対し
「バドミントンをしたい人が自由に集うことの出来る場」を、スクール終了後も継続して提供しています。

 地域型スポーツクラブは、「クラブ」という「ハコ」を創るという事が目的では無く、地域の人達が自らの自由意志で、スポーツに親しみ、継続して楽しみ、仲間を作り、地域としてのお祭りや安全な町づくり・美しい町づくりなどにも参加出来る、地域人材の養成といった地域基礎を築く事にこそあります。それが「地域型」と名付けられた本質で、スポーツが地域文化の再生に寄与していくツールである事を示しています。この本質こそが、地域の子ども達を健康的に育み、地域を愛する人間関係の構築に結び付けば、地域型スポーツクラブの役割は果たせたと言えるのでしょう。
【ニュースポーツ】 とは?
 ニュースポーツは、ニュー・コンセプチュアル・スポーツ (New Conceptual Sport) の略で、ここでのニュー(New)は,単に「新しさ」という事のみでなく、新しい概念を持ったという意図もあり、競技性のみでなくスポーツが寄与する多様な可能性をも含んでいます。
 価値として「Try」「Challange」を唱う事も多く、スポーツの機会入門といった感もあり、年齢に関係なく導入は簡易的なものが多いです。
 ニュー(New)の対比としてのオールド(Old)の存在は、既存の競技スポーツを示す事になると考えられますが、便宜的な分類の為にそうしているのであって、本来のスポーツそのものに、ニューやオールドがあるわけではありません。また、ニュースポーツは時として、軽スポーツ・簡易スポーツ・レクレーションスポーツ・ミニスポーツとして呼称され、それは競技スポーツを補完するサブスポーツとして捉えられてきた事にも起因します。主流(Main)に対して、サブ(Sub)やオルタナティブ(Alternative)といった視点で見られますが、このスポーツの価値と活用の有り方に問題は多くあったのだと思われます。スポーツは、行う実施者の主体性でそれがその個人にとってメインにもサブにもなります。サービス(種目)提供者もそれを理解し活用を図るべきで、何かの代替といった考えでの普及啓発では広がりが持てるはずもありません。そして、遊びの延長・レジャーとしての価値であったりもする事が、入口を広く持つこのスポーツの長所且つ弱点でもありました。流行に左右される事なく、地道に継続していく事こそが肝要ですが、近頃の健康志向や異年代交流などでは、誰もが親しむ事の出来るスポーツとしてのニュースポーツの意義は高いと思います。

 過去北区では、推進・普及啓発を体育指導委員が担ってきましたが、グラウンドゴルフやペタンク・ウォークラリーなどは、地域単位でも現在実施されており、キンボールやミニテニスなども、今後、同様の普及がされれば良いと思います。
 一例として、荒川区の「スポーツひろば事業」を説明するならば、夜間の学校施設開放の時間を地域スポーツの場として設け、バレーボールや卓球・バドミントンといった種目をはじめ、体育指導委員が啓発を目標にビーチボールバレ−やキンボールといったスポーツを紹介・実践する場としても活用がされています。また、健康福祉との連携という点で、いくつかの会場が「健康体力づくり」の場として開放され、介護予防の体操や軽スポーツを組み合わせたプログラムも提供されています。ニュースポーツが持つサブの部分の要素は、様々な形での提供が可能なのだろうとも思います。

 今後の課題として、定期継続的にニュースポーツを提供出来る場の設置と運営にあたる人材の確保がありますが、親子や異年代で親しむ事の出来る魅力や体力や性差などに拘らない、スポーツとしての価値は、地域のコミュニケーション・ツールとしても有効で、「さくら体操」普及員や学校PTAなどの協力を得る事が出来れば、飛躍的に区内でのスポーツ価値も高まり、新たなスポーツ愛好者の掘り起こしにも十分寄与するものと思われます。この様な動きを、どう具体的に働き掛けていくかが最大のテーマではありますが ……。
 
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